ムーミンの生みの親であるトーベ・ヤンソンについての映画が2021年日本で公開されました。
トーベ・ヤンソンはフィンランドの画家であり、小説家。
日本でもお馴染みのアニメ『ムーミン』シリーズの作者として世界的にも有名です。
『ムーミン』と聞くとムーミン谷で自由気ままに暮らすムーミンたちのお話を思い出しますよね。
実はムーミン誕生には作者のトーベの生きていた壮絶な時代が関係しています。
今回は映画『TOVE/トーベ』を見て知ることができたトーベ・ヤンソンとムーミン誕生の秘密をわかりやすく解説しています。
この記事でわかること
- トーベ・ヤンソンについて
- ムーミンの世界が生まれた理由
- 『TOVE /トーベ』の楽しみ方
トーベー・ヤンソンはこんな人
まずは映画を観る前に『ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン』(トゥーラ・カルヤライネン著)を読んでみました。
トーベの生涯は芸術で始まり芸術で終わっています。
トーベ・ヤンソンは彫刻家の父、挿絵画家の母の元フィンランドのヘルシンキで生まれ芸術家としての道を歩みました。
1918年に起こったフィンランド内戦から1930年にかけてフィンランドは暗黒の時代で物資不足の大変な時代。
父からは芸術の偉大さを学びますが、時には方向性の違いで衝突することもあったようです。
映画ではトーベと父ヴィクトルとのやりとりが印象的です
一方母とはとても仲が良く、家で熱心に絵を描く母の様子を見ることで大きな影響を受けて育ちます。
トーベにとって母は一番初めの先生であり、恩師のような存在。
2・3歳の頃には絵を描いていたといわれています。
その後トーベは芸術面で早くから才覚を表し、若くして挿絵画家としてデビューしました。
彼女の挿絵が掲載されたのは14歳の時。
翌年にはいくつもの挿絵を担当するようになっていました。
トーベにとって母の存在は大きく、当時ガルムという雑誌の風刺画を描いていた母の仕事はのちにトーベに引き継がれています。
トーベにとってはいつも穏やかな信頼できるムーミンママのような存在だったのではないでしょうか。
それからトーベはヘルシンキの美術学校に進みスウェーデン、パリ、イタリアを訪れます。
この期間ヨーロッパでは第二次世界大戦が勃発する空気に覆われ技術や文化にも暗い影を落としていました。
この時の旅で見た多くのものや感じたことを彼女は絵で表現しています。
その中でも1944年に起こったヴェスビオ火山の噴火はムーミンシリーズの『ムーミン谷の彗星』の原型になっています。
彼女はこの作品の中で自分が体験した世界を忠実に再現しようとしていたのですね。
ムーミンの世界が生まれた理由
ムーミンはなぜ生まれたのか
世の中が戦争で不安定になり画家としての仕事も行き詰まり絶望的な気持ちになっていた時。
トーベは不安な現実から逃れられる安全なムーミンの世界を作り出しました。
ムーミンのキャラクター自体は戦前に生まれたものですがムーミンの世界を作り出したのは第二次世界大戦中のこと。
トーベにとってムーミン谷は現実から訪れる隠れ家だったのですね!
「むかし、むかし、あるところに」という出だしから始まる物語の主人公は人間の子供ではありません。
主人公はトーベが風刺まんがを書くときのサインがわりに使っていた生き物で、ムーミントロールと名付けられました。
この時のムーミンは今と違って細身で鼻も長く描かれているのも面白いです。
ムーミンシリーズ第1作目の『小さなトロールと大きな洪水』は戦後すぐに刊行されたもので、内容も大洪水が地球を覆い全てが死の危機に見舞われるというもの。
自然の脅威に立ち向かうムーミンの家族にはスニフ、ニョロニョロたちが加わり最後には平和なムーミン谷が待っています。
このお話にはトーベの家族を中心にお互いを大切にする想いが込められている気がします。
トーベにとってムーミンの物語とはこのような位置づけとなっています。
ムーミン物語では特別な考えや哲学を表現したいわけではない。ムーミン一家は純粋で自分達と違う世界を受けいれ、登場人物が互いに仲が良いということが特徴である。
この映画を観るとこの言葉の意味を実感することができます。
ますますもう一度ムーミン初期の作品を読み直したくなりました!
『TOVE /トーベ』の見どころ
この映画の見どころはトーベの芸術家としてどんどん成長していく様子と自由な愛を表現していくところ。
当時自由な愛には規制が多く、とてもハードルが高いものでした
映画の中ではこの自由な愛がトーベの人生とその作品にどのぐらい影響を与えていたのかを知ることができます。
そしてトーベの人生に大きく関係してくる登場人物には芸術家が多くとても魅力的なところもポイント。
それぞれがムーミンのキャラクターの由来になっているところも見逃せません。
ここでは、この映画に出てくる彼女をとりまく登場人物とムーミンキャラクターとのつながりを解説していきます。
トフスランとビフスラン
トフスランとビフスランは常に一緒にいて離れることができない二人組。
自分達だけに通じる秘密の言葉を話すこの二人はトーベと恋人のヴィヴィカ・バンドラーがモデルになっています。
ヴィヴィカは舞台演出家でトーベの芸術性を早くから見抜き『ムーミン谷の彗星』の舞台化を提案します。
仕事もできて誰にでも愛されるヴィヴィカと不器用なトーベ。
映画ではこの二人の愛がテーマになっていますが、常にヴィヴィカに振り回されている様子はもどかしく感じることも。
しかし最後にはトーベは自由への第一歩を自分で選びます。
ここで頭に浮かぶスナフキンのこの言葉
このセリフはトーベが自分に向けて伝えたかった言葉のように感じます。
この映画ではヴィヴィカとの経験でトーベが成長していくところも見どころです。
スナフキン
自由をこよなく愛し、ものに執着しないスナフキンはトーベのかつての恋人、アトス・ヴィルタネンがモデルです。
スナフキンの緑の帽子は彼が被っていた帽子から由来しています。アトスは政治家であり哲学者。
既婚者でしたがトーベの恋人でもあり良き理解者です。
重すぎず軽すぎない二人の関係はトーベが作品を描き続けている間ずっと続きます。
のちに独り身となってからトーベに求婚しますがトーベの心はヴィヴィカで一杯。
孤独と放浪を愛するアトスが長年の付き合いであるトーベから別れを告げられた時の気持ちは計り知れません。
ただ、恋人同士でなくなった後も友人として生涯その関係は続いていたようです。
映画では自由奔放なトーベを包み込んでくれる、まさにスナフキンのような穏やかな存在で表現されています。
だんだんアトスがスナフキンに見えてきます
トゥーティッキ
トゥーティッキはムーミンのお話ではおしゃまさんという名前で知られています。
ムーミンのそばにいるけどべったり依存し合う関係でもなく、大切なことを気づかせてくれる大切なキャラクター。
トゥーリッキ・ピィエティラがそのモデルでグラフィックアーティストです。
映画の後半で出てきますが、のちにトーベの生涯のパートナーとなります。
ムーミンが有名になると同時に「ムーミンビジネス」に巻き込まれ、物語を思うように書けない時期がトーベにはありました。
その時励ましてくれたのがこのトゥーリッキ。
まさにムーミンに出てくるおしゃまさんそのものです。
名前も似ているのでトーベにとって大切な人だったんだな、と実感できます。
ムーミンを別の視点で楽しめることができるこの映画。
4月27日(水)にはBlu-ray&DVDが発売されるので30分のメイキング映像と共にお家で『TOVE/トーベ』をぜひ楽しんでみてくださいね。
ブックレットやポストカードの特典付き!
まとめ:『TOVE /トーベ』を楽しむ
トーベ・ヤンソンの人生は一言で言うと創作と愛。
映画『TOVE /トーベ』を観ることでトーベの人生とムーミンのキャラクターがどのようにして生まれたのかを知ることができます。
ムーミン好きな方には更にムーミンを楽しんでいただけるこの作品。
名前だけを知っている方にもムーミンに興味を持っていただけるきっかけになるかもしれません。
映画『TOVE/ムーミン』の楽しみ方
- まずは映画を観る
- ムーミンの本やコミックスを読んでみる
- もう一度映画を楽しむ
映画の中では『ムーミン谷の彗星』や後半ではムーミン・コミックスが出てきます。
ムーミン・コミックスは弟のラルスも手がけている風刺が効いたムーミンらしい作品の一つ。
こちらで詳しくご紹介しているのでぜひ、参考にしてみてくださいね。
ムーミンにはアニメや小説などいろんな楽しみ方があり、対象も様々です。
この映画はムーミンをもっと知りたい大人向け。
ムーミンの作者トーベ・ヤンソンを知ることで今までとは違ったムーミンの世界を楽しんでみませんか?
大人こそムーミンを楽しもう!
最後まで読んでいただきありがとうございました。